New ベースの備忘録 【僕とダリルの pleased to “meet” you】
その1 〜 2021年春
前年頃から考えてた「一生モノベース」入手を本気で考えようと思ってきた。
ベースを弾き始めて40年経って、もう60近くなったから、死ぬまで弾き続ける、とっておきの一本が欲しかった。
やはり、ずっと使ってきたジャズベースが良くて、となるとやはりfenderのジャズべ。でも、60年代や70年代前半のヴィンテージで極上を見つけるのも簡単じゃないし… あれこれ考えてて出た結論は、Fender USA 50TH ANNIVERSARY JAZZ BASSだった。
2010年発売の世界500本限定のこの楽器を海外の楽器オークションReverbで買う作戦。
半年ほどチェックし続けて、フランスに一台とアメリカに二台見つけてた。でも、安い物じゃないし、見つけてからすぐハイ!と買えるものでもなく。
と、いろいろネットを彷徨ってる時に、大好きなDarryl Jonesのwebサイトにたどり着くと、
ん??Jones Musical Instruments というサイトが。
あら? Darryl Jonesって自分の楽器ブランドあったのね。
知らなかった。
覗いてみると、そう言えば、Darrylは最近LAKLANDじゃない見た事ないベース使ってたけど、コレだったのね!!
うぉー!カッコいい!
Jones Musical Instruments か…

その2 〜 発見!2021/3/30
Jones Musical Instrumentsのサイトを覗くと、最近 Darrylが使ってるのと同じベースの写真があった。
ボディのシェイプもネックの感じも全てオリジナルの楽器だ。
「すごくカッコいい〜」と胸がときめく。
でも、ネットショップでも無いし、楽器サイトで買えるブランドでも無いけど…見れば見るほど、急激に欲しくなってきた。
そもそも、今ずっとメインで使ってるベースはLAKLANDのDarryl Jonesモデル!僕のDarryl愛は筋金入りです。(ジャズ弾けないけどね😅)
とりあえず問い合わせフォームがあるから日本から買えるかだけでも聞いてみようとメールしてみました。
その後1ヶ月ほどしてWilllomanという人から返信が。
「問い合わせありがとう!日本のお客さんは初めてだけど、我々に出来る事は全力を尽くします。具体的にどんなタイプのベースが欲しいのかお知らせください」という内容だった。
お!マジか〜!と思って、
「2マイクのJBタイプで基本Darrylと同じが良いけどポジションマークをブロックにしたい」と返信。
今思い出すと、この時点で、
返事来たよ〜!!ってかなり盛り上がったな。
Darryl Jonesと同じベースが弾けるのかも?と鳥肌が立った。

その3 ~ 事件勃発 2021/4/7
担当のWilllomanさんは親切で、その後のやり取りでオーダーに関して細かく熱心に説明してくれた。
ブロックポジションにするにはプラス$200、ベース制作にあたり半額を最初に、残りの半額を完成して発送した時に支払う。
納期は14-16週間の予定…など具体的になってきた。
あとはボディやピックガードの色などのオーダーや更に細かいセッティングの事とかになってくる。
一度のやり取りでこんなに進むものかとちょっとびっくり。
もうアタマの中にfenderは無かった。
Darrylと同じベースが弾けるのかもと、俄然盛り上がりながら、カラーサンプル等があるか聞いてみる事に。
すると、すぐに返信があって、カラーサンプルは無いけど、希望の色があったら教えてくれとの事。だいたいの色はできるから色の名前や写真とかあったら送ってくれと。
あと、現在制作中の何種類かのボディやピックガードの写真を参考に送ってくれた。
でだ、ここで事件が起きた。
このメールの最後に、Thanks,Darryl と。
ん?Willlomanさんじゃないの?
Darrylって、アナタ!?
え〜!!
マジか〜!!
やべー!

その4 ~ 文通開始 2021/4/9
前回メール最後の「Thanks,Darryl」には、そりゃもう大騒ぎ。
そもそもDarryl Jonesのベース工房とは言え、所詮はwebサイトだけなので、そこにお金を送ってベースを作るのだから、それなりの覚悟が要る。
しかもそれがアメリカとなると、期待や楽しみの反面、そりゃ不安もある。
担当のWilllomanさんとのやり取りで少しずつ信頼感や現実味が出てきたけど、ここで「Darryl」からの返信には「おー!マジか〜!」と思ってしまい、
気持ちを一気に加速させた。直ぐに色の事などを書いて、そのメールの最後に、
「ところで、今僕はMr.Darryl Jonesにメールしてるんですかね?」 と加えて返信した。
すると、またまた直ぐにメールが来て、そこには、
「Yes, it’s Darryl Jones. I deal directly with some of our clients. I’m pleased to “meet” you. 」(原文のまま)
お〜〜!!! Yesかよ〜!
pleased to “meet” you. だってよ〜!!
何てことだろう、インターネットは凄いな。 こんな、奇跡も起こっちゃうんだも。
Darrylからの返信を何度も何度も繰り返して読んで、繰り返すごとに、まるで彼が本当に喋ってるかのように感じて来て、
ベースのこともそうだけど、何よりDarrylと直接メールできてるのが目眩するほど嬉しかった。
結びは、Best,Darryl になってた。 カッコいい〜!!!
こうして僕とDarrylの文通がはじまったのでした。

その5 ~ ベース制作開始!2021/4/30
その後、Darrylとのやり取りで、色、ネックのカーブ、ゲージ、弦高…などを詰めた。
でも、基本的に「Rolling Stonesで使ってるのと同じベース」が欲しいので、詰めたというよりは、
「これはどうなの? どのくらいの高さなの? ココはどんな感じなの?」
と、ひたすら尋ねるだけだった。
で、いちいち感動して感心して「それでお願い!」という具合でとてもシンプルに運んだ。
唯一Darrylと違うブロックインレイのネックも手配がついたそう。
前の担当の人もそうだったが、Darrylも凄く細かく、丁寧に説明してくれるので、メールのやり取りは本当に楽しくて興味深かった。
大抵は、Darrylが居るアメリカ西海岸からメールが来るのはこっちの早朝なんだけど、着信があるといちいちドキッとして、一気に目が覚めて、汗ばみながら読んでた。
楽器のことがおおよそ決まったら、運送業者の手配をしてくれて日本までの送料も出た。
ケースに入れたうえで梱包した方が良いとの提案で、Darrylが使ってるのと同じツアーケースはどうだと聞かれて、またまた感動!大喜び!(笑)
色んな事に一喜一憂しながら、
ついに、正式に僕のJones Musical Instruments ベースが制作がはじまったのでした。

その6 ~ ストーンズ北米ツアー2021夏
「Hi Noriki,We are very pleased you have decided to join the Jones Musical Instruments family.」(原文まま)
2021年5月、遂にベースの製作が始まった。あとは予定の納期の14-5週間待つだけです。それまでのDarrylとのやり取りが無くなるのは寂しかったけど、どんなベースが太平洋を渡って届くのか想像すると胸が躍った。
1ヶ月ほど経って久しぶりにDarrylからメールが来て、僕がオーダーしていたブロックポジションにすると指板のアール径がデフォルトより少し長くなるとの事。
つまり、指板がDarrylの好みより少し平らになるけど、それで良いか?というもの。
ん〜、ブロックが好きだけどDarrylと同じセッティングだよな…と思って、速攻で「ブロックやめてDarrylと同じでお願い!」と返信。
そもそもDarrylのベースは指板にポジションマークが付いて無くて、それはそれでカッコいいけど、
無くてもちゃんと弾けるかなぁ?と言う不安も手伝っての「保険的な」ブロックポジションのオーダーだった。だから、この件で「潔く」ポジションマークの無いネックに新たに挑むことに!
7月末になってストーンズの北米ツアーが発表された。9/26セントルイスからのNo Filter Tour、2020年にコロナで中断したツアーの再開だ。
お!Darrylも忙しくなるな〜と、さもさも自分事のように考えてしまい、ヤケに盛り上がった。アホか。
なんだけど、続いてあまり良くないニュースも。
チャーリーの体調がよくなくて、今回のツアーには参加しないとのこと…

その7 ~ 2021夏-秋 RIPチャーリー
ポジションマークの変更や塗装の遅れ、ビルダーのバケイションなどで当初の予定よりベース製作は遅れていた。
秋頃には来るかな〜?と、そりゃ早く欲しかったけど、Darrylがメールの度に「遅れて本当すまない」と気を使ってくれるので、嬉しかった。
大きなメーカーじゃなし、おそらくビルダー1人で作ってるだろうから予定通りいかないのはしょうがないと思って気持ちは穏やかだった。
ストーンズ北米ツアーの発表からまもなく、2021/8/24チャーリーワッツは天に召されました。ストーンズにとってはもちろんも、ロックシーンに於いても偉大なドラマーの訃報に世界中が悲しみました。
9月末からツアーに出てDarrylも忙しくなったからメールの頻度は減ったけど、会場毎にアップするDarrylのインスタを見て「今日はナッシュビルか…今日はダラスか〜」とまたまた自分ごとのようになってニヤニヤしてた。
PS I’m using Chatham and Gresham basses on the tour and reports are very satisfactory. (原文のまま〜僕のベースはGresham)
とたまに報告もしてくれて、おー!!とかなり喜んだ。
ベースの完成が近づいた10月のメールで、ふたつ確認した。
ひとつは弦高やネックの仕込み角などをDarrylと同じにしてほしい事(弦は僕と同じでダダリオ105-45だった!)、
もうひとつはヘッド裏にサインをお願いした。
もうすぐ完成かな。嬉しいな〜

その8 ~ ついに完成!2021/11月
Hey Noriki,I hope you’re doing well. I have good news. Your bass is ready.(原文のまま)
おー!「ready 」きたよ!
ついに完成したって〜!
写真も来たよ〜!!と脳内歓喜の渦。 あとはDarrylが自ら最終チェックをするとのこと。
その写真を穴が空くほど見て、
もうもうsuper excitedだって返信した。とは言え、この頃Darrylはアトランタ、オースティン、デトロイトとストーンズツアー真っ最中で、家に戻るのは12月になるからもうちょっと待ってくれと。
ぜんぜんOKですよ!やっぱり写真添付はグッときたな〜
あと「Let me check all the figures」ってフレーズが… 何と言うかDarrylの声が聞こえてくるようで「Let me check」って嬉しいな〜と、いちいち上がる。
Darrylと同じセッティングにしてもらう事と、ベースにサインをしてもらうことを念を押してお願いしましたよ。
その後ピックガードの色の微調整などで、また何回かのやり取りがあったけど、その度にDarrylが楽しみに待ってる僕に凄く気をつかってくれて、
それはそれは嬉しかった。かえって、ここは日本人らしく、恐縮もした。
Darryl本人がビルダーさんと僕の中に入って連絡とり合ってくれてて、しかもストーンズのツアー中にメールやり取りしてるんだも。
よく考えたら、すご過ぎて意味が分からない。笑
ついに、物語は、クライマックスに、

その9 ~ ベース到着!2022/1月
12月半ばになって改めて住所の確認をして、いよいよshipping。
ここで最後にとても嬉しい「大事件」が起きたおかげで、ずっと頼んでいた「ベースにサイン」はとりあえず無くなりましたが、この件は未来のお楽しみに。
年が明けた1月6日に、僕のJones ベースは南カリフォルニアのVan Nuys空港から日本に向けて旅立ったもよう。
Darrylが送ってくれた情報でUPS Worldwide Expeditedのアプリで追跡できるから、税関手続きやアメリカ国内での移動も分かって面白かった。
数日経ってカリフォルニアからアンカレッジを経由(カーゴはアラスカ経由なんだ〜と勉強になる)して遂に日本に到着。
成田なのか羽田、はたまた、何処かは分からないけど日本には到着した。
ここからは通関手続きだと思うから、アプリの情報が中々更新されなかったけど、目と鼻の先まで来てるからもう直ぐだ!
日本国内の流通に乗ったのが、たしか1/13〜4頃でここから追跡も時間単位でしたいところだけど、英語のアプリだし、どうやら日本時間じゃないからその辺はアテにならず、Please Mr Postman状態で今か今かと到着を待っていた。
そして、多分今日あたりかな?と思ってた1月17日の夜、遂に到着。
感動の開封、
箱を開けたらアメリカらしくそれなりに雑な紙パッキンとセミハードツアーケースが。
ケースを開けると、ジャーン!!居ました!
ピカピカだね〜!無事に着いたんだね。
初対面、こんにちは!手に取ると、ネックが薄い塗装でしっとり木の感触。
チューニングして、日本で初めて音を出すJones Musical Instrument Gresham Bass
すげぇ。

その10 ~ 最終回 2022/1月
ついにアメリカから到着した"Jones Instruments Gresham Bass"
チューニングして音を出してみると「なるほど、こういうことなのか」と言う今まで味わったことの無い素敵なフィーリングでネックを握るのがとても気持ち良い。なんてゴツくて、透明でクリアなサウンドなんだろう。
どんな楽器が来るのかを想像して、そりゃ 世界のDarrylと同じだから良いに決まってるとは思ってだけど、思ってた100倍凄かった。
凄すぎて弾く度にニヤニヤ。いやいやスゲー!と感心しながらひたすら弾きまくる。毎日力んで弾き過ぎて何十年ぶりかに弦が切れた。笑
ベースが届いて約1ヶ月が過ぎて Darrylにベースの感想とスペックについての質問をしたら早速返信がきて、僕が相当気に入ったことをとても喜んでくれた。2マイクなので基本的にfenderJBをベースにしてるんだけどネックがちょっと太いことを質問したら、やはりDarryl本人のデザインで、fenderJBより少し太くすることで"more stable"になり"masculine sound"になるからだと。またまた関心する。
ハードウエアはHipShot、ピックアップはLindy FralinでどちらもJonesベースのためのオリジナルだそう。
初めてwebサイトのフォームで問合せたのが去年の今頃で、なんだかんだ1年くらいはDarrylと「文通」してたから、ベースができたのは半端なく嬉しいけど、メールのやり取りが無くなって少し寂しいので、今後も月に1度くらいは質問や近況報告(いらねって笑)のメールをしようと思う。
この言葉に甘えて、
It’s always good to hear from you Noriki.
Please continue to stay in touch.
Best wishes, Darryl
